これからのWebブランディング
2007年02月06日
本ではページ数の関係で割愛した「ブランディング」そのものについてちょっと書いておきたいと思います。
「ブランディング」というと何か高価なものや広く認知をしてもらっているもの、というイメージがあるかと思います。
しかしブランディングとは、そもそも“ブランド(Brand)”という事から来ていて、これは家畜を認識するための焼印の事である“Burned”から来ている言葉です。
そこから「認知」をされるもの、という事で使われるようになったのがブランドの語源となっています。
だからBMWと言えば高級車、ロマネコンティといえば高級ワイン、アディダスといえばスポーツメーカー、といった形の認識が成立していて、それが世によく言われる「ブランド」であり、そういった認知を作っていこういう活動を「ブランディング」と呼んでいる訳です。
つまり、ブランドとは認知される事であり、一般に認知がされている割合が3割〜5割を超えれば、かなり認知度があり、世間でいる「ブランド」として認められるのでは?と思います。
では、ブランディングとはそういった高資本の企業がシャワーのようにマスメディアを利用する事や、数百年という時間を掛けねば作り上げる事は出来ないのか?というと全く違う。
ことWebサイトに関しては益々その様相は事なってくる。
97年ごろからこの話をしてきて、未だに変わってはいないのだが、Webサイトを通じたブランディングのキーワードは「商売としてのサービス思考」と「ユーザーフレンドリーな検索キーワードの模索」だ。
前者は、Webサイトだけに関わるものではない。
何かモノでありコトが存在していて、それに対して対価を支払おうという人が存在している限り、売主は買主に対してサービスという形で無形の気持ちを提供しない限り、恒久的に売れ続ける事は不可能だと思われる。
お客様が来たら「いらっしゃいませ」という。
店の中を常に清潔に保っている。
電話が鳴ったらすぐに取る。
こういった事は商売をしていれば、ごく当たり前事だろう。
しかしその当たり前の事を杓子定規な定型作業とせず、カイゼンの名の元によりブラッシュアップをしていかなければ、コストや無駄な苦労ばかりが増え、本来の目的であるお客に対して気持ちよい体験をしてもらい、ファンになってもらい、リピーターとなってもらう事は不可能であろう。
その「どうすればお客に届くのか?」という事を考えるベクトルが「商売としてのサービス思考」だ。
これは小さな店舗、小さな企業ほどトップの創業の思いに重ね作り上げていくことが可能である。
そしてこの思考で大企業が自社のサービスを見直せば、そこにはパラダイムシフトの如き影響が生まれる。
少なくとも名村はこの10年で何度かそういった経験をしてきました。
先ほどの2つの後者である「ユーザーフレンドリーな検索キーワードの模索」に関しては、先ほどの「商売としてのサービス思考」とリンクをしてこそ、初めて腑に落ちるものであると思える。
言葉は違えども「ユーザーフレンドリーな検索キーワードの模索」が示すものはWebサイト制作のキードライバーとして近年は当たり前になっている事だと思われる。
(90年代にはこの話は全く受け入れられなかったのが懐かしいですが(笑))
しかし、その「ユーザー」がどういった人なのか、どういった人に自社のサービスを提供しようとしているのか?といった部分を導き出す思考こそが「商売としてのサービス思考」だ。
その思考をなくしてユーザーフレンドリーな検索キーワードを探そうとするのは、コンパスを持たずに海をさまようようなものだと思える。
なぜユーザーフレンドリーでなければならないのか?
なぜ自社の新開発の商品名では駄目なのか?
なぜインパクトのあるネーミングで売ってはいけないのか?
この質問に即座に答えられた人は恐らく「ユーザーフレンドリーな検索キーワード」を探すのは大変だという事を十分に理解している人だと思います。
旧来のユーザーの購買行動を示す言葉として「AIDMAの法則」があり、それは「Attention→Interest→Desire→Action」が、ことWebサイトにいたっては「AISASの法則」といった物が生まれてきた(これすらももっと細分化した法則を提唱している人もいますが)
これは「Attention→Interest→Search→Action→Share」といった流れを示している。
これが示しているように今のユーザーは何らかの形で検索エンジンを利用した入り口から入ってくる。(なぜ検索エンジンからなのかはまた別の機会に)
そうした時、サービスを提供する側としては検索エンジンで上位表示をされなければならないという事から始まったのはSEOだ。
しかし闇雲に上位表示を狙うのは全くナンセンスであり、その企業のサービスを明確に示すもので上位を狙うべきだ。
こういった部分はSEOのスペシャリストである住 太陽さんのブログなどですばらしい情報が掲載されているので、住さんにお任せしたい。
問題はそのキーワードの選出が、ユーザーにとって想像しやすい、ユーザーのニーズに合致しているか。
もっと端的に言えば、キーボードを叩いて変換しやすいのか、といった視点までも今や考えなければならない、という事だ。
そのキーワードを見つけ出す時に初めて「商売としてのサービス思考」が役に立つ。
自社の商売・商材を理解し、お客にサービスを提供しようという思考のもと、その商売・商材はどういった言葉であれば、ユーザーのニーズとマッチングした言葉となるのか?
その過程の積み重ねが「ユーザーにとって使いやすい・見つけやすい」企業としての認知につながり、ファンを形成し、障害顧客育成となり、ブランディングとなっていく。
この点が名村がWebサイトを構築する時に最も大事にしている事であったりします。
そして、先日長谷川恭久さんのPodcastに出演させていただいた時に「今注目しているのは?」という質問に対して「RSSでありATOMなどのフィードです」と答えたのが、ここまで書いた事の延長にあります。
フィードの類はギークの間の中ではもちろん「今更何を?」といわれることだろう。
しかし、IE7が登場し、やっと「一般の人」が使える技術になったからこそ、我々Web制作者はその技術を有効に使える手法を模索しなければならないと感じています。
丁度Webサイトが2000年を越えた辺りからやっと「一般の人が使えるツール」となったように。
フィードに注目しているのは、それが先ほどのAISASの法則の中で検索である「Search」に至る前を補完してくれるものの一つがフィード情報だからです。
Webサイトにおいてフィードによって検索までの道を作り、検索エンジンからの道をユーザーへの気持ちを考えたキーワードを押さえ、Webサイトの構築を「商売としてのサービス思考」で考える事によって、インターネットの世界だけで言えば、少なくとも今はそれぞれを補うことが出来るでしょう。
ただ、問題としてはそこにリアルのサービス活動、そしてそこに当然付随する企業人としてのアクションログの関連をはずしては全てを考えきることが出来ませんが、それについてはまた後日。