松下電器の温風機事故対策にみるブランドプロミス
2006年01月12日
先ほどYahoo!のニュースでトップにも出ていた松下電器の温風器事故の対策記事を見て驚いた。
・元ソースの共同通信版はこちら
<strong>全世帯にはがきで危険周知 松下電器、温風機事故で</strong>
松下電器産業は12日、一酸化炭素(CO)中毒事故を引き起こした石油温風機の回収を進めるため、全国のすべての世帯と宿泊施設の計約6000万カ所に、危険性を知らせるはがきを送ることを明らかにした。一民間企業が、全世帯を対象に郵便で呼び掛けるのは極めて異例だ。
回収、修理対象の温風機約15万2000台のうち、約4割に当たる約6万2000台の所在が今も分からず、事故再発を防ぐには周知を徹底する必要があると判断した。広報グループは「これでほぼ漏れなく周知できるのではないか」と話している。
はがきは回収対象の機種や危険性を知らせる内容で、2月中旬に全国の各世帯やホテル、旅館などにあて先を特定しないで郵便局員が配達する。
こういった事故を起こしたときに企業の体質がはっきり見えてくる。
温風器の事故は、恐らく年末年始の商戦において、松下の業績にとてつもない影響を与えたと思う。
そして、原因を調べていくに従い、松下側の修正対応の悪さが際立ったニュースが出てきていて、さらに追い討ちをかけていたことだと思う。
これまでの流れであれば、恐らく天下の松下ブランドは失墜をしていた事だろう。
しかも回収しようにも物理的に数万台の所在確認が出来ない以上、これまでであれば、結果として「見つからないものは放置する」しかなかったと思う。
でも、ここで松下はこの流れがもたらすものをやっと理解したのだと思う。
「バイラルマーケティング」という言葉が出てくるように、口コミにおけるブランド構築は今や大きな手段となっている。
それは小さな企業にとって費用対効果が高いマーケティング手段という訳ではなくて、大きな企業にとっても同じだろう。
それをとても上手に使ってブランド形成をしている一つは昨日エントリーしたAppleだ。
恐らく松下はその費用対効果として、15億円ほどであれば、効果がある、と判断したのだろう。
・6000万x50円だけども、シミュレーションすると、15億円ぐらいかと。
しかも、事故対応ではあるものの、日本全国の家庭、ホテル、旅館に届く事を考えれば、大義名分を持った自社の広告を打つことが出来るとも捉える事が出来ます。
というのはともかく、ここまで話が大きくなったのはそもそも松下電器の初動があまりにずさんだったからだ。
今回の事をちょっと真剣にネットで調べれば、真偽は定かではないものの、温風器の事故を越えた事件が起こっている可能性もある。
そこまでこないと、松下は動かなかった、というより動けなかったのだと思う。
今、ネットという媒体が生まれてからというもの、その会社の事、プロダクトの事を社員以上に知っているユーザーは莫大に増えた。
その中で企業がしなくてはならないのは「自社のユーザーへの約束」であるブランドプロミスを明確にすることだ。
そして、そのブランドプロミスを掲げた以上、それは必ず完遂しなければならない。
でなければ、ユーザーはたった一つのミスでされ許してはくれない時代になったのだ。
それを松下は理解していなかったのだろう。
そして、事故発覚から、これだけの時間が経ってやっと対応策を打つことが出来た。
これが事故直後であったならば、松下は逆に(事故の概要しか知らない)ユーザーからの信用を勝ち取った可能性すらあったのにだ。
俺が昨年よりやっている不動産会社向けの個人情報保護法のセミナーで、この事を何度となく伝えている。
事故をした場合に以下に早くそれを認め、次善策を講じれるか。
その時に見るのはどこなのか?ユーザーでしかないという事を。
これをもっと早くやっていれば松下は今回の策にはいたらなかったと思うし、そういった流れを見ているユーザーとしては、そこから挽回を図ろうとしている企業の対策の一例を垣間見る事が出来た、という意味では、今回の事例はとても大きなものだと思う。
# 事故にあわれた方々にはお悔やみの言葉も無いほど、今回の事故は酷い結果を招いています。
# この記事は松下の対応についての是非を言うわけではなく、あくまで企業の対応の事例としての紹介として記述させていただいております。