Webディレクション

これからのWebディレクションをする上での「あたりまえ品質」を考える

Webディレクションをする上での当たり前品質

Webディレクションをする上での当たり前品質


最近ドットコムマスターの試験とか、なんやら会社での作業とかで忙殺されていて、めっきりここを書かなくなってしまったのですが、再開です(笑)


個人的な事ですが社員になりました。

私は今の会社には00年9月から在籍しているのですが、知っている人も居るかもしれませんが、本職は声優業をしていたってこともあり、実は現職ってずっと「アルバイト」ってことにしてもらっていました。
本人的には全然それで構わなかったのですが、役者の道を廃業したことから、本年5月より正式に社員として登用してもらいました。

遅れを取り戻すための勉強の過程で

そこで、今の会社に勤める以前の96年からWeb制作の仕事自体はしていたのですが、精神的な部分で今までの腰掛じゃまずいなぁって事で今までの遅れを取り戻そうとそうとうあちこち勉強に行ったりしているのですが、そこでふと「Webディレクションとしての当たり前品質」って事を考えるようになりました。

なんでそういう発想になったかというと、「会社からの研修制度」とか「報奨制度」とか「資格取得に関してのインセンティブ」ってのがうちの会社にもできてきたのですが、制作業務に対して与えられている「会社からの研修制度」ってのをみて、「ん?それってどうなんだ?」と思ったんです。

どんな内容かというと、


研修制度ができました。研修制度ができました。

研修制度ができました。

  • ユーザービリティ(Usability)
  • 最適なユーザーインターフェース(User interface)
  • 情報アーキテクチャ(Information Architecture)

についての研修を会社出費の上、受講が出来る、ってものだったんです。
これを見ると、WebディレクションであったりWebプロデューサー業をしている人であれば「おお、それが学べるならとてもいい勉強になる」と思います。

確かに勉強にはなる、でもね・・・。

けど、冷静に考えてみてください。
上にあがっている事って、WebディレクションであったりWebプロデューサーは「知っていて当たり前」のことではないのでしょうか?
私は何も最新を追うことが「ベスト」とは思っていません。でも、クライアントからなんらかの与件があって、それに対する回答をしていく中で、現状のWebの動向を知らないで最適を提案することは出来ないはずですし、出来るからこそ「Webプロデューサー」「Webディレクション」でありえるはずなんです。

印刷業界のディレクションの「当たり前品質」

そう考えた時、ちょっと前に印刷のディレクションをしている友人と話をしていたことを思い出しました。
僕は印刷業界に無知だったこと、また自分が「Webのディレクションをしているけど、HTMLも書くし、デザインもしたりする」ってことから、その友人に「じゃぁ、印刷なんて楽勝で出来るんでしょ?」と聞いたんです。

すると彼の答えは「いや、出来ないよ。ディレクションが印刷をするわけじゃないしね」って事でした。


輪転機を回すわけじゃないよね・・・

輪転機を回すわけじゃないよね・・・

これは彼の話をよく聞いていると、「ディレクションをする上で、どの紙にどのインクで印刷をすればどういう仕上がりになる、って事はもちろん分かっている」けど、そんなのは「印刷のディレクションする上で当たり前の能力でしかないよ」ってことらしいのです。
まぁ、確かにディレクションをする人が輪転機を回す事はないですよね(笑)

でもその時「そっか、でも『どの紙にどのインクで印刷をすればどういう仕上がりになる』のを知ってるなんて、紙もインクもものすごい種類があるのに、すごいね」と返しました。
その返しに彼は「そんなのが分かってないんだったらディレクション出来ないって(笑)」と笑って答えてくれました。

彼の言葉ではたと気がついた。

『どの紙にどのインクで印刷をすればどういう仕上がりになる』のを理解している能力なんて持っていて当然のことであって、それすら無い人間が「ディレクション」とは言えないし、出来たからといって威張れるものではない。

それこそが彼の言ったことでした。
そう考えた時、今のWebのディレクションでありWebプロデューサーというのは「当たり前品質」のレベルがものすごく低いのかも?と感じたんです。

知っている必要は誰のためにあるのか?

たとえば「IPマスカレード」と聞いてそれが何か分かりますか?「JPINIC」がどういう組織か分かりますか?
分からなかった時点でもう失格なのかもしれません。
確かに「いつ使うんだよ?」と思います。

でも、この「知っている」というのは誰のためなのか考えたことがありますか?
これは100%クライアントのためです。

クライアントは僕らちのことを「Web制作のプロである」と思って相対していただいているわけです。
なので、「いつ使うんだよ?」って問題ではなく、クライアントにとって「プロである知識」を持っていなくてはならないわけです。

別の例で言えばここをご覧の人の中でマークアップエンジニアの人がいるかとも思いますが、その方にもお聞きします。

「HTMLが書けますか?」

恐らくほとんどの人が「書けるに決まっているよ。それで仕事をしているんだから」っていうと思います。


HTMLがかけますか?

HTMLがかけますか?

では再度質問します。

「HTMLを書くにあたって、CSSだけでデザインが出来ますか?CGIが吐き出す為のHTMLが書けますか?ということは、PerlやPHPは多少でも知っていなければならないし、そのCGIが吐き出すって事は、その前提のデータベース、例えばMySQLやPostgreSQLが多少でも分かりますか?」

ここまで出来る人、マークアップエンジニアではほとんど居ないはずです。
ってなると、今考えている「当たり前品質」的には「駄目」なんです。
仕事で「HTMLが書ける」っていうのは、そこまで出来て「書ける」であって、単にHTMLが組めるっていうのは「知っている」でしかないんです。

そんのはデジ○○ハ○○ッドの学生でも出来ますし、趣味でやっている人でも出来るんです。
それ「仕事」とは言いません。

それが僕の考えている「当たり前品質」なんです。

今後ますます高く求められると思う「当たり前品質」

Webって言うのは出来てたかだか10年程度のものでしかないので「その程度で」ってレベルで「仕事が出来る」と言えてしまう人が多くなった。
その程度で「出来る」ってなるから、それより多少でも上の知識研修は「会社からしてあげる研修」になってしまうわけです。

話を戻して、僕はその視点から、冒頭の制作業務に関しての研修の内容にも「なにをいまさら?」と思ってしまった訳です、
少なくとも以前はもっと尖がった「そんなのは当たり前だよ!!」って言っている人が多い会社だったと思いますが、だんだん会社が大きくなると、そういう人が「マイノリティ」になってきて、平均的な思考の平均的な人が多くなってくるんだなぁと感じた訳です。

まぁ、最後は会社への愚痴になっていますが、少なくとも「Webディレクション」「Webプロデューサー」ってものが持っているべき「当たり前品質」を目指して今後も自己研鑚していきたいです。


名村晋治のプロフィール

Webディレクター 名村晋治

株式会社サービシンク

代表取締役 / テクニカルディレクター

名村晋治

1996年よりWeb制作に携わり、キャリア28年目のWebディレクター

2010年に不動産業界特化のWeb制作会社「サービシンク」を設立して、今も現場でディレクターとしてPMをしています。

詳しいプロフィール

大学在学中の1996年「Web制作集団ネイムヴィレッジ」を設立し100社を超えるサイト制作の企画、ディレクション、デザイン、マークアップ、システム開発に携わる。

2000年不動産検索サイトHOME'Sを運営している株式会社LIFULL(旧:ネクスト)に合流。
2005年からは都内のWeb制作会社に合流し取締役を歴任。同社ではフロント実装からディレクションまでを担当。

2010年東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社、株式会社サービシンクを立ち上げる。 不動産業界に特化したサイト制作の、アートディレクション~HTML実装設計~システム設計のすべてに携わるジェネラリスト。基軸としてはクライアントの商売に寄り添う為に、徹底的に思考を巡らせる為のディレクションを行う。

Webブランディングの入門教科書」、「変革期のウェブ」を「マイナビ出版」から出版。

2000年から「Webディレクター育成講座」を独自開催し、40時間のカリキュラムを通し「仕事を回す事ができる」Webディレクター育成手法には定評があり。
首都圏のみならず地方でも講座実施、参加者は延べ700人を超える。 もう一つのキャリアとしてプロとして舞台俳優、声優。 1996年から養成所に通い始め2004年に廃業するまでの間はWebディレクターと二足のわらじでの活動。

俳優としては、東京の小劇場でシェイクスピアやマリヴォーといった古典を中心に舞台に出演、また声優としては大きく活躍できる程ではありませんでしたが、NHK海外ドラマや、洋画等、ゲームでの声優を行っていました。

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