『アックゼロヨンの意義』(Web協会メルマガ寄稿コラム転載)
2009年09月18日
今年の6月に会員になっている日本Web協会のメルマガにコラムを寄稿させていただいたのですが、話をしたら、読んでみたいといって頂けたので、転載しています。
丁度タイミングとしては、先日発表が終わった後なので、前後している内容でもありますが、大枠時期には関係ない内容と思ってますので、まぁ、いいかな?と。
ということで、下からがそうです。
『アックゼロヨンの意義』
2004年9月、まだ暑さの残る時期に五反田の東京簡易保険会館ゆうぽうとには多くの人が詰めかけていました。
開催されたのは「Ac+C'04キックオフ・イベント」。日本で初めてWebサイトにおけるJISの規格が出来た事を受け、当時“Webアクセシビリティをみんなで創造しよう!”というスローガンを元に、これからWebサイトをどうしていこう、どうなっていくのか、という期待と不安の入り交じったイベントでした。
イベントでは「日本のアクセシビリティの夜明け」のようにその意義が多くの方から話されました。
また単純にお祭り雰囲気のようになるだけでなく、パネルディスカッションの場では「JIS X 8341-3(以下ウェブJIS)は出来たが、ただ盲目的にそこに記載されていることを実装すれば、アクセシブルなサイトが出来ると思うのは間違いであり、真のエンドユーザーのニーズをくみ取り実装していくことこそがアクセシビリティへの本当の方法だ」という警鐘とも取れる発言がパネラーから出た事は、今にも通じる重要な視点だったと思います。
当時からアメリカではリハビリテーション法 第508条という法令によって政府が調達する製品や市民に提供する情報、サービスには障害者・健常者が同様のレベルでアクセス出来ることが義務づけられていると言うことが有名な事例として各国でも様々取り組みが行われていました。
今にして思うと、このアックゼロヨンは、日本において一番最初に声高に「アクセシビリティにどのように向き合うか?そしてそもそも向き合うべきなのか?」という漠然と広がっていた疑問へのある種の答えの投げかけだったのではないかと思います。
ウェブJISが出来た事、アックゼロヨンという形でそれを日本のサイトに還元するイベントの発足により、間違いなく「アクセシビリティ」という言葉は日本のWebサイトを作る人の中に広く浸透していったはずだからです。
そしてその後アックゼロヨンは3回のアワードの発表を行い、日本でも十分にアクセシブルなサイトを、その上で更にクリエイティブなサイトを作る基盤があることを証明してきました。
一方で「アクセシビリティ対応はそれ自体が崇高な事は十分に理解が出来るが、実際のコストを出すクライアントにとってそれが必ずしも有益と判断をされる訳ではないため、実装する事ができない」「商業活動において障害者の方を対象にするべきことは分かるし、公共機関での対応などにもそれは見られるのだが、Webサイトでどこまですべきなのか?本当に必要なものなのか?」という不安・不満が現在のWebサイトの制作に関わる方々の中にあり、そのジレンマを引き起こしているのもまた紛れもない事実だと思います。
今年通算4回目のアックゼロヨンのアワードが開催されることは、キックオフイベントより追いかけてきた身としてはとても嬉しく思います。
一方で、これからのアックゼロヨンが、そしてそのアワードが示していくべき道は日本のWEBサイトに関わる全ての人、それは発注者としての方や、制作サイドに関わる人たちを含めた全ての人が、「Webサイトにはアクセシビリティが必要なのである」ということを考えるべくもなく、ごく自然に思われるようにしていくことなのではないかと思っています。
そこに至る道を見定めないままでは、一部の先進的なWEBサイトのみが実装を行っているだけのものに成り下がってしまうはず。
今年のアワードに上がるサイト、それぞれに注目していきたいと思います。
〜プロフィール〜
株式会社ソナー ディレクター 名村 晋治
1993年よりインターネットに触れ、1996年ごろより、Webサイトの制作に関わりWebサイトにおけるブランド訴求を軸に各種サイト制作に関わる。2005年ソナーに入社し、2006年より同社取締役。不動産Webサイトの構築のためのディレクション業務に従事。
自社でのディレクション業務だけでなく、各地でディレクションやブランディングに関するセミナーも開催。