Webディレクション

日本の企業文化における評価制度と1on1の課題と可能性

私は学生時代からWeb制作の仕事に従事し、現在48歳でWebディレクターとして27年のキャリアになりました。2010年に株式会社サービシンクを創業して、14年間の経営の中で日本人向けの評価精度を考えてきましたし、今も考えています。

そんな中、最近、海外ではランク付けや評価項目の数値化が廃止され、上司と部下が1対1で仕事のプロセスにフォーカスした話をする新しい人事評価制度が広まっています。


この記事は、組織の風土を変え、成果を出すための手法として注目されていますが、日本の企業文化においても同様の効果が期待できるのでしょうか?

今回は、私の経験を踏まえながら、この新しい評価制度が日本の文化や企業風土にどのように適用されるべきか、考察していきたいと思います。

日本とアメリカとの文化の違い、人の持つ感覚の違い

日本の企業文化を海外のと比べた時、特に上意下達の文化が根強いことは考えておかないといけないと思っています。

企業によっては部下は上司の意見に従うのが当然とされ、異を唱えることが難しい状況にあります。この日本での上司の暗黙的に存在してしまう権力、その影響で上司と部下の間で1on1を行うこと自体が難しい状況があります。海外のようなオープンなコミュニケーションが求められる1on1評価制度を導入する場合、この権力構造を緩和し、対等な関係性を築くことが重要です。

私が所属しているIT業界では人によっては比較的古い人との関係性を否定し、リンク先の記事に違和感を感じない方もいるかとは思いますが、実際の企業(それがIT企業でも)「対等な関係性」を築くのが難しいケースは多々ありこのような文化の中で、海外の新しい評価制度がどれだけ適応できるかは、上にあげた記事への賛否に対して大きな課題となります。

日本人の論理建てた議論への苦手

また、日本人はディベートや事実に対する議論が苦手とされ、感情を除外した意見交換がなかなか進まないことも、新しい評価制度導入の障壁となります。

議事に対して話をするのですが、肯定・否定において、それが話者の「人格否定」的な形で受け取られるケースが多々あります。

この部分は、今度が話し手側が相手の気持ちを汲み取りすぎると、今度は「人格否定と受け取られたら嫌だ」という意識から、話す内容を「当たり障りのない」内容にしてしまいます。

これらによって、評価における情報の共有や意見の交換が円滑に進まないため、「海外の制度における柔軟な組織風土や効率的な業務遂行」をそのまま日本に持ってきても妨げられるケースが多々出てくると思われます。海外の1on1方式の評価制度を日本の企業で導入するには、まずこのような文化的な壁を乗り越えることが必要です。

メンターだけではなくてメンティーとしての慣れも必要

最近流行っている「1on1」では、「メンター」側のスキルがフォーカスされがちで、メンター側がすべて上手くやるべきだという風潮があると感じます。

一方、メンターを受ける「メンティー」側のスキルに関する情報が不足しています。
これが、1on1での意見交換がうまく機能しない要因の一つになっているのではないでしょうか?

メンターだけでなく、メンティー側もそのの役割やスキルを理解し、効果的なコミュニケーションができるようになることが求められます。企業としては「メンター制度」導入時には従業員に「メンター」「メンティー」の双方のスキル向上に努めるとともに、風土改革を進めていくことで、新しい評価制度が上手く機能する環境を整える必要もあるでしょう。

この「メンター」「メンティー」はそもそも事実に対して対応のディスカッションができる文化があるからこそすんなり受け入れられる話しであり、その文化基盤が少ない日本では制度だけを入れても、うまくいっていないケースが多いのでは?と思っています。

日本企業において、新しい評価制度がうまく機能するためには、まずメンター・メンティー双方が必要なスキルを身につけるところから始めなければならないと思っています。

となると、文化的にディベートや議論というのから縁遠い日本人はそれをスキルとして「学ぶ」場を何かしらで持たねばならず、しかも双方がそのスキルが必要・・・というなかなかのハードルの高さが求められる・・・

これを達成するには、企業としては従業員の教育や研修を充実させ、従業員が自分の役割や責任を理解できるようサポートする必要があります。

が、「学べば実践できる」なんてことはないのがコミュニケーションの難しさですよね・・・

ディスカッションのコミュニケーションスキルが必要

日本独自の文化を前提として「ディスカッション」のコミュニケーションスキルを向上させることが今度「正しく評価を得る」ためには重要担ってくると思います。

「働き方改革」を元として、ジョブ型雇用が広まりつつあります。この様に「働き方」「評価のされ方」がグローバル化していく中で、これまでの日本式を超えるコミュニケーションスキルを身につけることが、自身の競争力向上につながると思っています。

私は「頑張っていれば誰かがその背中を見てくれて、求めている評価をしてくれる」という時代から、自分で「評価を勝ち取る」という時代になってきていると感じています。

その次代の変化の中で、これまでの封建的だった上司と部下の関係性が改善され、1on1でのコミュニケーションが円滑に進む環境は徐々に醸成されていくのでは?と考えています。

今後の日本での評価制度の変化

結果として、新しい評価制度が日本の企業文化に適応し、企業全体の働きやすさや成果に繋がることが期待できます。

ただしこの場合、当然ながらその変化を疎ましく思う、苦手と思う方も出てくると思います。

これは確かに「最大多数の最大幸福」の話になってきます。ただ、大きな流れとしてこちらに傾いていると思いますし、時代の判断基準は10年も立てば大きく変わってしまいます。時代の変化に合わせて自分の価値観を変化させていけるスキル・・・というよりも、気持ちの若さ、柔軟性というものもまたこれからのビジネスパーソンとして必要なものではないか?と自戒を込めて感じています。

結果として「評価」という一つの小さな話ですが、このような変革が、日本企業が今後のグローバル競争に勝ち抜くための一助になるのでは?と期待している部分があります。

今後も海外の評価制度や働き方を参考にしながら、日本の文化や企業風土に合った方法を見つけ出すことが重要です。具体的な取り組みとしては、従業員間での意見交換やディベートの場を積極的に設けることで、コミュニケーションスキルの向上を図ることができます。また、上司と部下の権力関係を薄めるために、フラットな組織風土を目指すことも効果的です。これらの取り組みを通じて、従業員が自分の意見やアイデアを自由に発表できる環境を作り出すことが求められます。

自分自身の感覚のアップデートを常に行っていく

進化し続ける企業文化(特定企業の文化ではなく、社会での企業文化)に柔軟に対応しながら、日本企業が国内外で活躍できるよう、引き続き変化に敏感である必要はあると思います。

新しい評価制度の導入は、企業の働き方改革を促すきっかけとなり、より良い職場環境の実現に繋がる手法の一つだとは思います。そのため、企業としては新しい評価制度を適切に導入・運用することで、働き手が自己実現を追求し、組織全体の成長に寄与できる状況を作り出すことが重要です。

というのは理想、建前としては誰もが言いがちですが、そのために大事になってくるのは、前提にある「日本、日本人ゆえの文化基盤」からそれをどの様に組み替えればいいのか?という視点だと思っています。

まとめとして、新しい評価制度を日本企業で上手く導入するためには、文化的な壁を乗り越え、メンター・メンティー双方が必要なスキルを身につけることが一層重要になってきます。

Web制作は、企業体、フリーランスといった形を問わず、グローバル化が進みます。

「組織」での評価だけではなく、クライアントを含めた評価を獲得していという意味でも、海外の評価制度や働き方を学びながら、日本人に適した形で取り入れていくことが求められてくるのではないかな?と思っています。


名村晋治のプロフィール

Webディレクター 名村晋治

株式会社サービシンク

代表取締役 / テクニカルディレクター

名村晋治

1996年よりWeb制作に携わり、キャリア28年目のWebディレクター

2010年に不動産業界特化のWeb制作会社「サービシンク」を設立して、今も現場でディレクターとしてPMをしています。

詳しいプロフィール

大学在学中の1996年「Web制作集団ネイムヴィレッジ」を設立し100社を超えるサイト制作の企画、ディレクション、デザイン、マークアップ、システム開発に携わる。

2000年不動産検索サイトHOME'Sを運営している株式会社LIFULL(旧:ネクスト)に合流。
2005年からは都内のWeb制作会社に合流し取締役を歴任。同社ではフロント実装からディレクションまでを担当。

2010年東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社、株式会社サービシンクを立ち上げる。 不動産業界に特化したサイト制作の、アートディレクション~HTML実装設計~システム設計のすべてに携わるジェネラリスト。基軸としてはクライアントの商売に寄り添う為に、徹底的に思考を巡らせる為のディレクションを行う。

Webブランディングの入門教科書」、「変革期のウェブ」を「マイナビ出版」から出版。

2000年から「Webディレクター育成講座」を独自開催し、40時間のカリキュラムを通し「仕事を回す事ができる」Webディレクター育成手法には定評があり。
首都圏のみならず地方でも講座実施、参加者は延べ700人を超える。 もう一つのキャリアとしてプロとして舞台俳優、声優。 1996年から養成所に通い始め2004年に廃業するまでの間はWebディレクターと二足のわらじでの活動。

俳優としては、東京の小劇場でシェイクスピアやマリヴォーといった古典を中心に舞台に出演、また声優としては大きく活躍できる程ではありませんでしたが、NHK海外ドラマや、洋画等、ゲームでの声優を行っていました。

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