Webディレクション

Webディレクターが伝書鳩に見えてしまうケースとその理由

Webディレクターが伝書鳩に見えてしまうケースとその理由

ChatGPTで生成した「Webディレクターが伝書鳩とみられてしまう」イメージ


先日X(旧Twitter)でこちらのポストを拝見しました。

こちらについて思うところがあったのでX側で結構長文を投稿したので、それのリライト版を残しておこうと思います。

▼目次

Webディレクターは「伝書鳩」なのだろうか?

Webディレクターが伝書鳩は良く言われる例えで、今も言われているということはそう思われる動きになっている方が多いのでしょう。 ただ、上記で掲載したXのポストで書かれていることができるWebディレクターは正直少ないと思う。
というのは、多くのWebディレクターにとって「そこはデザイナー側なのでは…?」と思っていることがあります。

組織によってWebディレクター・Webデザイナーの境界線は異なる

組織によっても、育ってきた環境でも「ここまでがWebディレクター、ここからはWebデザイナー」という線引は微妙に違いがあります。
その「認識の違いがある」ことを前提に双方でコミュニケーションを取ることを前提にしていただきたいと思っています。

それをせずに理論としての「Webディレクターはかくあるべき」が他職域から提示されると、同じく他方からも「Webデザイナーはかくあるべき」を提示することになり、最終的に空中戦の不毛な争いになるだけだと感じています。

揚げ足取りのようになるのでためらわれるのですが、ポストに掲載されている例の「写真を選ぶ」は、結構象徴的だと思っています。、Webディレクターからしたら、

「美的センスがない自分が選んで、あとからデザイナーから『なんでこれを選んだの?ありえなくない?考えたら分かるでしょ?だったらこっちで選びなおすわ!(怒)』と言われたらどうしよう…」

と思うWebディレクターは一定数いる、と感じています。
そしてこう思っているディレクターにとってはデザイナーにデザインの話しをするのは「恐怖」ですらあります。

  • 「写真選びぐらいは出来るでしょ?」ではなくて「それが出来ないからディレクター」という人も実際にいる。
  • 「仕事なんだから言うべきことは言おうよ、怖いと知らんがな…」ではなくて「デザイン部分はデザイナーの仕事と思い込んでいる」からこそ、相手の領分に軽々しく口を挟めない。

ということもあるよ、ということです。

「その程度も出来ないでWebディレクターするなよ」と言われてしまうと、それもやはり暴論になってしまいます。 なぜなら僕は、それは本質的にはWebディレクターの仕事ではないと考えているからです。

必ずしも「伝書鳩でいいや」と思っている訳ではない

他職域からみて「Webディレクターはこれぐらいやれよ!」と思うことはあると思います。僕の今の仕事でも、それを見た方から思うことはきっと多々あると思います。

ただそれは必ずしも「面倒くさくて、サボりたくて、全部丸投げしてやれ」と思っている訳ではないことを知ってもらいたいんです。
悪気はなく、「能力的にできない」とか「他職域の領分と思っている」から「やっていない」という方もいるのだと思っています。

個々人によって能力には差異があります。そしてその能力の違いは会社では「給料の差」という形で反映されていると思いますし、されているべきです。少なくとも弊社ではそうしています。

「Webディレクター」は貰っている報酬に関係なくこれが出来ないと認めない、という話になってしまうと、それはもう仕事ではなくなります。

これらの話も前述の通りで「写真選び」のケースでは「名村はWebディレクタあーに美的選球眼は必ずしも必須ではないけど、それを必須で持っているべきと考えている方もいる」という話なだけです。

これはもう「Webディレクター」としての必要条件と十分条件の話の違いだと思っています。

人によって「Webディレクターの必須スキル」も違いがある

僕は自分がデザインもコーディングも開発もインフラもやってきたので一通りできるけど、他者にそれを全部求めることはしません。
ただ僕が28年やってきた中で「Webディレクターとしてやらないといけないこと」は当然求めるし、もっと言えば仕事をし始めて4年目に作った「Webディレクター育成講座」のカリキュラムでも、当初から「必須と思うもの」は伝えてきています。
ただしそこにはデザインの話は入れていません。

実際にはカリキュラムは作ってるんですけど、5日コースでは時間と重要度の関係から入れていません。(過去10日コースを受講の方は資料があるはずです)

ですので、リプ元でRTした内容が『Webディレクターが絶対にできなければならないことか?』と言われると僕は必ずしもそうではないと言います。

ただ、デザイナー側からしたら「デザイナーさんは、そりゃそう思うよなぁ…」というのは強く思います。 ですから、デザイナー側の声としてこういうのが上がるならば「その要望を達成できるWebディレクターになりたい」とも強く思います。

今回のポストはWebディレクターにとって大きな問題提起

ここまで書いていて思ったのは、発端となった冒頭のポストを投稿された「こばやす( @kobayas_s )さん」と「デザイナー側からみたWebディレクター」「Webディレクター側からみたデザイナー」についてとかの対談とかさせてもらえると、とても有意義なんじゃないかな、と感じました。

「相手側を潰す(論破?)」とか「Webディレクターを代弁する」とかではなくて「互いに暗黙知でどこを境界線と思っている?」のすり合わせ、です。

話をしてみて「あ、そういうことだったの?勘違いしてたね、お互い」となれば、それはWebディレクターとデザイナーの間で「互いの境界を確認するコミュニケーションは必須なんだ」という大きな経験知(←知識の方です)になりえるのでは?と感じました。

先週ポッドキャストで話しをしましたが、


僕は『Webディレクター』という仕事を「誇れる仕事」にするために今もWebディレクターを続けていますし、小むづかしいこともX(旧Twitter)ポッドキャスト、このブログで発信しているつもりです。
業界の末席でWebディレクターに誇りを持ってやっている人間として長くはなりましたが、コメントさせていただきました。

「こばやすさん」のご意見を否定するとかではないものの、Xでのご返信、またそれをリライトしたこのブログの投稿含め、文責は負うつもりですので、X上で空中戦になりそうであれば、対談を前向きに検討いただきたいと思い、Xでポストしていました。

それに対してX上で「こばやすさん」から下記のリプをいただけました。

こばやすさんも仰っている通りで、WebディレクターとWebデザイナー、すでにそれが明確に「仕事」となって20数年経ち、なんとなく互いの「ここはあなたの領分でしょ?」と暗黙になってしまったゆえに話し合うこともなくなっていた問題に対して原点回帰としては意味があると思っています。

どのような形でか実施をする方法を考えますので、ご興味がある方は続報をお待ちいただけると幸甚です。


名村晋治のプロフィール

Webディレクター 名村晋治

株式会社サービシンク

代表取締役 / テクニカルディレクター

名村晋治

1996年よりWeb制作に携わり、キャリア28年目のWebディレクター

2010年に不動産業界特化のWeb制作会社「サービシンク」を設立して、今も現場でディレクターとしてPMをしています。

詳しいプロフィール

大学在学中の1996年「Web制作集団ネイムヴィレッジ」を設立し100社を超えるサイト制作の企画、ディレクション、デザイン、マークアップ、システム開発に携わる。

2000年不動産検索サイトHOME'Sを運営している株式会社LIFULL(旧:ネクスト)に合流。
2005年からは都内のWeb制作会社に合流し取締役を歴任。同社ではフロント実装からディレクションまでを担当。

2010年東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社、株式会社サービシンクを立ち上げる。 不動産業界に特化したサイト制作の、アートディレクション~HTML実装設計~システム設計のすべてに携わるジェネラリスト。基軸としてはクライアントの商売に寄り添う為に、徹底的に思考を巡らせる為のディレクションを行う。

Webブランディングの入門教科書」、「変革期のウェブ」を「マイナビ出版」から出版。

2000年から「Webディレクター育成講座」を独自開催し、40時間のカリキュラムを通し「仕事を回す事ができる」Webディレクター育成手法には定評があり。
首都圏のみならず地方でも講座実施、参加者は延べ700人を超える。 もう一つのキャリアとしてプロとして舞台俳優、声優。 1996年から養成所に通い始め2004年に廃業するまでの間はWebディレクターと二足のわらじでの活動。

俳優としては、東京の小劇場でシェイクスピアやマリヴォーといった古典を中心に舞台に出演、また声優としては大きく活躍できる程ではありませんでしたが、NHK海外ドラマや、洋画等、ゲームでの声優を行っていました。

最新の記事

Webディレクター育成講座

900人が受講をし、28年のキャリアを学べる『Webディレクター育成講座』
*/