Webディレクション

制作会社がオフショアパートナーと上手に付き合う4個の秘訣を公開します


名村が代表をしているWeb制作・ホームページ制作会社である株式会社サービシンクでは現在ベトナム拠点のオフショア開発をお願いしています。
社員としてのメンバーも絶賛募集していますので、ぜひサービシンクの採用サイトからお申し込みください。


話を戻しまして、オフショア開発ですが、このブログをご覧の方の会社でも、

  • 海外オフショアに依頼をしたいけど、不安がある
  • 実際に頼んだことがあるけど、海外オフショアに依頼をしたら、プログラムの精度がものすごい悪かった

といった不安や実害があって、利用に二の足を踏んでいる方もいるのではないでしょうか?

名村も以前は実際そういう思いがあり、なかなか依頼をするにまでは至っていませんでした。ですが、開発規模が大きい案件のご依頼を受けることも有り、ラボ型での依頼をする先をさがしていて、現在は1社に1年半ほど(2019年10月16日時点)、合計5名ぐらいの依頼をさせていただいています。

その経験の中でオフショア開発ベンダーと一緒に仕事をする上でのコツと言ったものが分かってきました。この部分を理解しないまま仕事をすると、恐らく日本側は「クオリティが低い」「意図を汲み取ってくれない」「作っているもののことを何も考えていない」「オフショアはやっぱり使えない」といったことを考えるようになると思います。

もちろん依頼するオフショア企業や、そこの人たちにも問題がある場合もあり一概にこうすれば完璧!とは言いませんが、少なくとも日本人の発注側が知っておくことでミスマッチは激減するので、ぜひ下記を試してみてください。

1.オフショアパートナーは日本人ではないことを理解しプロジェクトのバックボーンをしっかり徹底的に伝える

当たり前ですが、オフショアベンダーの人たちは日本人ではありません。ですので「日本人ならば分かるはず」を前提に考えては絶対だめです。

日本人はどうしてもオーバースペックを期待した上でに、それに見合っていないと「使えない」と極論に走ります。
しかしオフショア開発に従事してくれている方々は「日本生まれ日本育ちの日本人の機微を理解している」人ではありません。もっといえば「エンジニアリングのスキルを買ってもらう」ことを期待しています。

ですので、依頼をするときには日本人であれば「自分で理解をする」かもしれない下記のことは、改めてしっかりゆっくりと伝える必要があります。

  • 依頼をする案件がどういったサービスなのか?
  • 日本だけのサービスの場合には、それが日本の中でどういったサービスであり重要性はどういったものか?といった背景
  • 最終的に納品をする企業(受託の場合はクライアント、自社サービスの場合は依頼主の自社)がどういったことをしている企業で、なぜ今回の開発がそもそも発生しているのか?
  • 依頼をしている案件が依頼主の企業にとってどうった位置づけのビジネスなのか?

こういった仕事の背景を伝えていないまま開発だけを依頼しても相手はいわゆる「かゆいところに手が届く」対応をしてくれるはずがないんです、だって分からないから。

そういったバックボーン、背景が分からないから、「言われたものを作る」しか無いんです。
しかもその上で依頼主側が「正確でない依頼」をするから、ますますオフショア開発のエンジニアも「これでいいのか?」と思いながら作ります。

それで出来てきたものに対して日本人は、

確かに言った通りだけど、普通考えたらここは◯◯じゃなくて✕✕なのは分かるだろ・・・。
そんなことまで言わないと分からないのかよ・・・。
ほんとオフショアの人ってやりづらいわ・・・。

と、もうめちゃくちゃ自分勝手なことを言うんです。

それを言いたいなら日本人に依頼をするべきです。
あなたの考えている「普通」は日本人にとってはかろうじて「普通」かもしれませんが、海外の方にとっては通用しません。

冒頭で書いたとおり日本人に依頼をしているわけではなく、海外の方と一緒に仕事をしているのです。
その上相手は日本独自のサービスをそもそも知らない可能性のが高いのです。

1つ目は「プロジェクトのバックボーンをしっかり徹底的に伝える」ことです。

2.伝える時は主語・述語・目的語を徹底して明確にする

サービシンクに来てくれているオフショア拠点との間に入る「ブリッジエンジニア」の方は日本語がとても堪能な現地の方です。

その方と雑談をしているときに、

日本語は世界一難しい言語だと思います

とおっしゃっていました。

そう日本語ってそれぐらい難しい言語らしいのですが、なにか難しいかというのを聞くと、

一文が長くても短くても主語・述語・目的語が無くなる場合があり、結局何の話をしているのかが分からなくなる

ということらしいです。

これは日本語の特徴だったりします。
日本語は主語や目的語が無かったり指示代名詞に変わったりするのですが、日本人は日本語に慣れているので、会話でも文書でもどういった話をしているのか読み解けます。

小学校の国語で一番難しいのはこの部分らしいですが、それも中学・高校になっても国語〜現国を通して理解のための訓練が続きますし、日常会話でも練習をしています。

ですが海外の方にはその点がすごく把握しづらいそうです。
そのため、ある特定のプログラムであることは分かる文脈だったとしても、

ちゃんと動いていないようなのでプログラム確認をしてください

こういう聞き方をする人の頭の中での期待は、

正しく動いていないので、何が原因で動いていないかを調べて、正しく動くように直して私にみせてください。

ってことだと思います。

しかし前述のような言われ方をすると、相手が何を期待していて、自分がどうするべきなのか?を読み取ることにすごく苦労されるそうです。
もっといえばその部分の理解に物理的な時間がかかるそうです。
(まぁ、日本人でもこれだと分からない人はいると思いますが)

これを改善しない限り、「言いたいことを伝えて理解してもらうための時間」がものすごくかかります。
その上、これは言語文化レベルの違いの話なので、「慣れてきたから」といってもそれほど大きく改善しないし、出来ない内容なのです。

これを改善する方法を記載します。

依頼をする方が「誰がどうてみてもそうとしか読み取れない文書術」を持たなければならない

名村があちこちで実施させていただいている「誰がどうてみてもそうとしか読み取れない文書術」ですが、何より役に立ったのはこの「オフショアの方への連絡」の時です。

どういった事に気をつけたのかというと、

  • 頭の中での文書作成時に英語の構造をできるだけ考える
  • 一文をできるだけ短く簡潔に書くようにする
  • 主語・述語・目的語を絶対に書くようにする

といったことです。

これを意識して書くと、日本語的にはかなりツッケンドンというかキツイというか、断定的な書き方にどうしてもなります。ただ海外の方にとってはそれで嫌な気持ちになることはほぼなく、むしろ「分かりやすい」と思っていただけるようです。

日本人的に書いてしまいそうな文例

テストサーバを作ることになったのですが、クライアントとやり取りをしているチケットを確認してもらえますか。
AWSで構築するのですが、以前に作ったテスト環境と似た形で作ってもらって構いません。
不明な部分があれば質問貰えれば先方にすぐに確認をします。

このように書いたほうがいいよという文例

・以前に作成したした「テストサーバ」と同じスペック・構成でテストサーバを1環境追加します。
・新しく構築する環境の詳細情報は ◯◯◯◯◯_HP_DEV-4498 のチケットに纏めました。
・上記の纏めは、以前に作成した「テストサーバ」の資料のサーバ名を変えてただけです。
・「テストサーバ」とスペックは同じなので、それ以外の情報は変更していません。変更する必要があれば連絡してください。
・スケジュールは◯月◯日に稼働をさせたいです。
・先に構築にどれぐらい期間が必要かを算出をして報告してください。

色々端折っていますがイメージはこんな感じです。
こういった書き方をチケット管理システムであればマークダウン記法、wiki記法で見出しやリスト表示を正しく行えば、相当伝わりやすくなります。

3.外国語に変換しやすい日本語を使う

オフショアの方と仕事をしていていると、どうしても「日本語⇔外国語」の翻訳が入ります。
そのためもちろん返事が「ん?!」と思う日本語のときもあります。

ですが分かってきたのは「外国語→日本語」への翻訳が変なのではなく、「日本語→外国語」への翻訳出来ない、しづらいことの方が大きな問題になる、ということです。

というのは日本の企業に常勤することになるブリッジエンジニアさんはある程度翻訳スキルが高いです。ですが困るのは「伝えられた日本語にしっくり翻訳後が母語側にない」時です。

ここで日本人が単語や行間に含めたニュアンスが間違えた伝言ゲームとして伝わってしまいます。


母語を日本語に翻訳する時は「意味まで正しく理解している母語の単語を、どの日本語にすればいいか?」なので、やりようがあります。

しかし逆に「意味がよく分からない日本語を母語でどう伝えればいいか?」「日本語的な意味は分かるが、それを伝える単語が母語にない」場合に齟齬が起こってしまうことの方が多いように感じます。

それを考えると、日本人側ができるだけ「外国語に翻訳しやすそうな単語」を選ぶ方がいいです。別に厳密に「ベトナム語で・・・」「タイ語で・・・」「中国語で・・・」ということ言っている訳ではありません。

ですが、意味が複数ありそうな単語等は使わず、一対一で翻訳できそうと思う単語を意図して使うだけでもコミュニケーションロスは一気に激減するようになります。

4.行間を読まないといけない要素を徹底的に排除する

日本語で難しいと言われるのが「する・しない」「Yes・No」が分かりづらいということのようです。
何をしらたいいのか?実施してもいいのか悪いのか?という事が分かないので困るということが多い要です。

例えば、

◯◯◯◯◯◯様から以下のご相談をいただきました。
実現手段ございませんでしょうか、ご確認をお願いいたします。

この文章が意味しているのは「確認する」なので、外国人の方にとっては「確認」以上のことをすることが出来ない場合があります。

ですが、これの意図しているのは、

実現手段がないかを検討し、できれば実現出来る方法を見つけ出してください。
仮にその方法が無ければ無いと回答、ある場合ならば私自身が理解できる文章、もしくはクライアントにそのまま見せられる文章で返信をください。

というのが意図であり「実現手段を見つけ出してその方法を私に教えて下さい」というのが本来伝えるべき内容です。

本来の意図をそのまま文章にした場合、「日本人→日本人」でのやり取りでは直接的すぎて敬遠されてしまうことが多いと思います。下手すると「そんなすぐ分かるわけないじゃん」と相手に切れられる場合もあるかもしれません。

そのため日本語では「オブラートに包み直接的な物言いを避ける」事が多く、結果として「行間に込めている本当の意図を汲み取ってね」ということを相手に求めます。

しかしこの「行間」を汲み取れない場合、相手の方は「確認」をしたままで返事をしない場合があります。でも本人はすごく真剣に「確認」をして、下手をすると「改善案」も見つけ出しているかもしれないのですが「回答」をしないんです。

だって「回答」を求められていないから。
そして「確認したんだけど、どうしたらいいんだろう?」と思ってモンモンとしていたり、「確認をしたのですが、どうしたらいいですか?」と返ってきます。

ここでまたミスコミュニケーションが発生し、日本人的には、

いや、確認したんだったら、返事してよ!(怒)
返事しないと何も進まないでしょ?こっちはエスパーじゃないんだよ。

みたいな、もう訳わからない自分勝手なことを言い出すことになります。
「確認」しか求めていないのは自なのに・・・。

ですので、外国の方に伝える場合には行間に意味を込めず、「最終的に望んている具体的なアクション」を明示して伝えることが重要です。

結局求められるのは日本語力

サービシンクでも最初に上記のような部分に気がつけずに、同じ話を延々と自社⇔オフショアベンダーとやり取りをしていたことがありました。

しかし上記に気がついてからは、「日本人⇔日本人」でのやり取りに比べて少しキツイ物言い、キツイ指示文書になっているのですが、「日本⇔オフショア」でのやり取り齟齬は激減しました。

実際に作業をしている人が目の前にいる訳ではないからこそ、指示命令系統側にいる人は「どのように伝えるか?」がものすごく求められます。

ということは結局、対外国人であっても「日本語力」が求められます。

  • 同じ意味だけど、複数の解釈を持ちづらい単語を知っているか?(ボキャブラリー)
  • 文章を冗長に書かず簡潔な短文で伝えたいことを表せるか?(文書力)
  • 行間を込めずに端的に伝えることが出来るか?

といった「誰がどうてみてもそうとしか読み取れない文書術」を駆使したやり取りができれば、オフショアの方との仕事は驚くほど捗る事になります!


名村晋治のプロフィール

Webディレクター 名村晋治

株式会社サービシンク

代表取締役 / テクニカルディレクター

名村晋治

1996年よりWeb制作に携わり、キャリア28年目のWebディレクター

2010年に不動産業界特化のWeb制作会社「サービシンク」を設立して、今も現場でディレクターとしてPMをしています。

詳しいプロフィール

大学在学中の1996年「Web制作集団ネイムヴィレッジ」を設立し100社を超えるサイト制作の企画、ディレクション、デザイン、マークアップ、システム開発に携わる。

2000年不動産検索サイトHOME'Sを運営している株式会社LIFULL(旧:ネクスト)に合流。
2005年からは都内のWeb制作会社に合流し取締役を歴任。同社ではフロント実装からディレクションまでを担当。

2010年東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社、株式会社サービシンクを立ち上げる。 不動産業界に特化したサイト制作の、アートディレクション~HTML実装設計~システム設計のすべてに携わるジェネラリスト。基軸としてはクライアントの商売に寄り添う為に、徹底的に思考を巡らせる為のディレクションを行う。

Webブランディングの入門教科書」、「変革期のウェブ」を「マイナビ出版」から出版。

2000年から「Webディレクター育成講座」を独自開催し、40時間のカリキュラムを通し「仕事を回す事ができる」Webディレクター育成手法には定評があり。
首都圏のみならず地方でも講座実施、参加者は延べ700人を超える。 もう一つのキャリアとしてプロとして舞台俳優、声優。 1996年から養成所に通い始め2004年に廃業するまでの間はWebディレクターと二足のわらじでの活動。

俳優としては、東京の小劇場でシェイクスピアやマリヴォーといった古典を中心に舞台に出演、また声優としては大きく活躍できる程ではありませんでしたが、NHK海外ドラマや、洋画等、ゲームでの声優を行っていました。

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