Webディレクション

Web標準時代のwebディレクターの役割:3

そして、マークアップエンジニアである。
Web標準がそのままイコールCSSレイアウトである、というのは大きな間違いだ。
ただ、HTMLをWeb標準に則り、文章を論理構造を明示する為のものと捕らえるならば、デザインはCSS側によって制御していかざるを得ない。
W3Cが遥か90年代に文書構造とデザインの切り分けを謳っていながらも、制作の現場がテーブルレイアウトの流れていった時代は不幸だった。

そして今CSSによるデザイン制御が騒がれる時代になった今、これまでコーダーと呼ばれていた人たちはマークアップエンジニアにならなければならない。
これは「コーダー」がHTMLをブラウザでデザイナーの提出したビジュアルを再現する事だけを行っていたのに対し、そのデザインの要素から文書構造を考え、それに従った、本来の意味での「マークアップ」を行っていかなければならなくなった事を示している。
そして、エンジニアの際に言ったとおり、それは本来の意味でよりプログラマライズされており、単にコード化するだけのコーダーではなく、マークアップを行うエンジニア(技術者)なのだという事を自身が認識していかなければならない。

では、そこに至って何が求められるのだろうか。

・正確なHTML、XHTMLの仕様の理解
・サイトの要素への論理的な見出しつけ

恐らくこれが求められることであろう。
恐らくこれが出来ればWeb標準に則ったサイト構築は概ね出来るはずである。(これはWeb標準に「これだ」という答えがない事を前提としている)

その際に、今やっかいなのは「アクセシビリティ」「ユーザービリティ」の問題である。
これをWeb標準と混同して考えてしまう人が非常に多い。

Web標準とアクセシビリティ・ユーザービリティの確保は本来別問題である。
ただ、Web標準に則っていれば、その両者を満たしやすい、というだけである。

つまり、Web標準だ!と言ってマークアップを行っていく際に、WEB-JISや、WCAG1.0(現在2.0のWDが作成中)に捕らわれすぎ、準拠する事が目的になっているサイトを時々見受ける。

これはこれでいい事なのではあるが、本来のWeb標準とは別と考えるべきである。
極端に言えば、テーブルでも読み上げ順を明示していけば、音声ブラウザなどで、サイト運営者側が意図した情報の提供は可能でありながら、テーブルレイアウトでサイトを作る事が出来るのだ(これはテーブルレイアウトでページを作るのが悪と言っているわけではない)

そうではなく、あくまで今後HTMLを作成する人は、文章としての論理構造を把握し、それに従ったマークアップを行っていける能力がまず必要であるということだ。
その上でコーダーと呼ばれる人が、HTMLをつくり、それがブラウザ上でデザイナーの要求したビジュアルを再現出来るものになしえる、というのが作業であった以上、今後マークアップエンジニアは、論理構造を明示したHTMLがWebブラウザ上でやはりビジュアルを再現出来る能力が必要なのは言うまでもない。

今後、(誤解を恐れず言うならば)クライアントから、「テーブルレイアウトで作って欲しい」といわれ、「出来ません」と答える制作者がいないのと同様に「デザインはCSSで制御してね」と言われて「No」と言えない時代が来るのは明らかだ。
今コーダーと呼ばれていた人たちはドラスティックな変化の中にいる。

これを認識し、日々の作業で忙殺されている中で、いかにそのスキルを身につけていくかが、今後の生き残るか否かの分かれ目となっていくことだろう。


著者・名村晋治のプロフィール

名村晋治

株式会社サービシンク

代表取締役 / テクニカルディレクター

名村晋治

1996年よりWeb制作に携わり、キャリア25年目のWebディレクター

大学在学中の1996年「Web制作集団ネイムヴィレッジ」を設立し100社を超えるサイト制作の企画、ディレクション、デザイン、マークアップ、システム開発に携わる。

2000年不動産検索サイトHOME'Sを運営している株式会社LIFULL(旧:ネクスト)に合流。
2005年からはWeb制作会社に合流し取締役を歴任。同社ではフロント実装からディレクションまでを担当。

2010年東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社、株式会社サービシンクを立ち上げる。 不動産業界に特化したサイト制作の、アートディレクション~HTML実装設計~システム設計のすべてに携わるジェネラリスト。基軸としてはクライアントの商売に寄り添う為に、徹底的に思考を巡らせる為のディレクションを行う。

Webブランディングの入門教科書」、「変革期のウェブ」を「マイナビ出版」から出版。

2000年から「Webディレクター育成講座」を独自開催し、40時間のカリキュラムを通し「仕事を回す事ができる」Webディレクター育成手法には定評があり。
首都圏のみならず地方でも講座実施、参加者は延べ700人を超える。

詳しいプロフィール

もう一つのキャリアとしてプロとして舞台俳優、声優。 1996年から養成所に通い始め2004年に廃業するまでの間はWebディレクターと二足のわらじでの活動。

俳優としては、東京の小劇場でシェイクスピアやマリヴォーといった古典を中心に舞台に出演、またNHK海外ドラマや、洋画等、ゲームでの声優を行っていました。

俳優時代の経験を活かし、演劇の訓練メソッドを利用した「コミュニケーションスキル」向上を目指したセミナー・研修も実施しています。

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