BacklogとAI、どこから手をつけるか ─ JBUG Creative #4 に登壇しました
2026年8月26日、ヌーラボ東京事務所で開催された「JBUG Creative #4 Backlog×AI 実践知共有会」に登壇させていただきました。私がBacklogを使い始めたのは2006年、今年で20年目になります。
いただいたテーマは「BacklogとAIをどう利活用しているか」。20分という枠でしたので、事例を個別に紹介するのではなく、「結局、何から手をつければいいのか」の地図を渡すことに時間を使いました。
選択肢が増えすぎて、動けなくなっている
この3年、Backlog周辺のAIは大きく動きました。2023年11月のAI要約、2025年11月のAIバックログスイーパー、2026年3月のBacklog AIアシスタント正式リリース。公式MCPサーバーも出ています。
ただ、選択肢が増えたことで逆に迷いが生まれているように感じます。Backlogの中のAIを使えばいいのか、ChatGPTやClaudeを使うべきか、Claude Codeのような「黒い画面」からやったほうがいいのか。でもエンジニアじゃないからあれ自体がよくわからない──。そういう方が、けっこういらっしゃるのではないかと思います。
そこで当日は、紹介するものを3つのレベルに分けました。誤解のないように申し上げると、これは聞いている方のレベル分けではなく、手段のレベル分けです。
Lv.1 Backlog標準のAI機能(管理者が有効化するだけ)
Lv.1.5 GASやGPTsで小さな自動化を作る
Lv.2 MCPを使ってAIエージェントから操作する
Lv.1:AIが「Backlogの中にいる」ということ
Backlog AIアシスタントの本質は、機能の多さではなく、AIがBacklogの中にいるという一点だと思っています。
汎用の生成AIに課題を要約させようとすると、画面を開き、コメントを全選択し、貼り付け、「これはプロジェクトの課題で……」と前提を説明する必要があります。この準備に3分かかるなら、自分で読んだほうが早い。だから続かないんです。CSVの一括登録も同じで、私自身インポートは生涯で2〜3回しか使ったことがありません。
もうひとつ、生成AIを使い始めた方が最初にぶつかるのが「何を聞いていいかわからない」という壁です。私はいつも「隗より始めよ」とお伝えしています。「自分の課題の一覧を出して」でいい。人間はそんなに頭が良くないので、できることから少しずつ肌に馴染ませていくしかありません。
ここは分けて考えてください
セキュリティについて、ひとつ強調しておきます。
「学習データに使わない」ことと、「その情報を生成AIに投げていいか」は、まったく別の話です。 学習に使われないから機密情報を投げていい、とはなりません。質問した時点で、データは相手のサーバーに届いています。
その点、Backlogの中で完結するAIアシスタントは、参照範囲が自分の参加プロジェクトに限られます。顧客名の入ったコメントをそのまま扱える安心感は、受託の現場では想像以上に大きいと思います。
Lv.2:外にいるAIが、Backlogに手を伸ばす
一方のMCPは構造が逆で、AIはBacklogの外にいて、そこから手を伸ばして読み書きします。
当日は自社のBacklogを繋いだ実演をお見せしました。「最近登録されているけど未完了のチケットを調査して、緊急度と担当、内容概要を一覧にして」と投げると、一覧だけでなく最後にこう返ってきます。
計測設定と改修のチケットの順序が逆転している(改修が今週リリースなのに効果測定が未着手)
優先度「高」かつセキュリティに関わる項目が100日以上超過したまま処理中
「処理済み」のまま止まっているチケットが複数ある
正直に言って驚きました。人間が数十件のチケットを頭に入れて、その相互関係の矛盾に気づくのは、まず無理です。
ただし代償があります。編集権限を渡すとは、最悪の場合、課題が消えるということです。 慣れないうちは「削除させない」「上書きさせない」を徹底してください。
差は「AIがどこにいるか」
両者の違いは機能の優劣ではなく、立ち位置です。
組み込みのAI | MCP等の外部AI | |
|---|---|---|
AIの居場所 | Backlogの中 | Backlogの外 |
文脈を渡す作業 | 不要 | 接続の設計が必要 |
得意なこと | その場の理解・作成 | 横断分析・自動実行 |
必要な準備 | 有効化のみ | 環境構築・権限設計 |
主なリスク | プラン制約 | 誤操作・情報の持ち出し |
どちらが偉いということはありません。道具をどう使うかの話です。普段チャットでAIを使っている方なら、素直にBacklogのAIアシスタントが最短です。日常的にコードを書いている方なら、MCPに進む価値は十分にあります。
結局、Backlogにちゃんと書くこと
最後にお伝えしたのは、身も蓋もない結論です。
AIの精度を上げる一番の近道は、Backlogにちゃんと書くことです。
これはAIの話ではありません。書かれていなければ、AIはそれ以上のことを返せない。ない情報は、誰にも作れないからです。
うちの会社では、チャットでの仕様決定は厳禁にしています。調査結果のSQLひとつでも、チャットに流したら後で見られません。すべてBacklogに残す。プロジェクト管理ツールは、覚えておくために書くのではなく、忘れるために書くものです。 人間が記憶に頼っている限り、プロジェクトは必ず破綻します。
そしてAIが読める粒度で課題を書けるかどうかは、結局のところビジネス文章力の問題になっていきます。ここが次に効いてくるスキルではないかと考えています。
ご参加いただいた皆さま、運営のJBUG Creativeの皆さま、会場をご提供いただいたヌーラボさま、ありがとうございました。
ご質問は毎週金曜23時配信のPodcast「Webディレクションやってますラジオ」宛にどうぞ。